公開日:2022/06/01
2020年4月1日より2018年7月に改正した健康増進法の一部が全面的に施行されました。これにより、完全分煙したお店や完全禁煙にしたお店が増えました。そこで気になるのが分煙による売上の変動です。ここでは、分煙による売上と利益の関係について紹介します。分煙してお店の売上や利益が気になる方はぜひ参考にしてみてください。
受動喫煙防止法によって、8,400億円の経済損失があるといわれています。業界の団体からは「客が減る」と反対の声が上がっていますが、これは真実なのでしょうか。
結論からいうと「正しいとも間違っているともいえない」です。そもそも関係者に「売上予測を聞いた」ことで得られたデータですが、これには科学的な根拠がありません。つまり、聞いた話で実際に分煙と売上の間の因果関係があるかは定かではないといわれています。
もう少し噛み砕くと受動喫煙防止法が売上に影響している可能性があるのか、店の責任者が感覚的にそう思っているだけで因果関係がないのかを断言できないということです。タバコを吸ってゆったりとした時間を過ごす喫茶店が分煙、あるいは禁煙すると売上が下がったといった事例や逆に家族連れのお客さんの利用が増えることで売上が上がる場合もあるとされています。
そのため、分煙による売上の変動というのは一概に損失が出たとは言い切れません。ただし、この聞き取り調査によって「外食業界に8,400億円の損害」といった、あたかも分煙と売上に因果関係があるような記事が公開されていることで、世間の誤解を招いているといえるでしょう。
改正健康増進法では店の中の一部に受動喫煙防止法を満たす「喫煙室」を設けて分煙し、完全禁煙とすることで、お客さんが少なくなってしまうのを心配している飲食店も多いはず。しかし、実際のところ分煙と売上についての因果関係というのは明確になっていません。
そこで、ここでは分煙を行うことによるメリットとデメリットについて詳しく紹介します。まずは分煙を行うメリットです。分煙を行うことで得られるメリットは次の5つが挙げられます。
1つ目は喫煙者が店に来なくなるのを防ぐことができる点です。JTが行った全国の喫煙者率調査によると人口の約20%が喫煙者とされています。完全に禁煙にしてしまうと、この20%の顧客を切り捨ててしまう可能性がありますが、分煙にすると喫煙者のお客さんを逃さないで済む可能性が高いです。とくに居酒屋や喫茶店は分煙がおすすめです。
メリットの2つ目はたばこのにおいが嫌いなお客さんを集客できる点です。完全禁煙にしてしまうと喫煙者の客足が遠くなってしまいますが、分煙にすると非喫煙者と喫煙者の両方を集めることができます。
3つ目は団体客を集められる点です。団体客の中にタバコを吸う人がいると、喫煙者のために分煙のお店を予約するケースが多いです。完全禁煙にしてしまうと、団体客のお店選びの候補から外れてしまう可能性があります。
4つ目は、清掃コストの削減です。店内どこでもタバコを吸えるようにした場合は、タバコの吸い殻や汚れによる清掃のコストがかかります。しかし、分煙すると喫煙室のみの清掃で済むので、クロス張り替えも小規模で済むため、メンテナンスコストを大幅に削減できます。
5つ目はイメージアップにつながります。望まない受動喫煙をなくすという世の中の動きに合わせることになるので、お店のイメージアップになります。分煙をきちんとうることで、飲食店としての対応は紳士であるという印象を与えることができるでしょう。
次に分煙するデメリットです。分煙をするデメリットは一つで、席数が少なくなるといった点です。喫煙室を設置することで、余計なスペースを取ってしまうため、元々の席数と比べて少なくなってしまいます。
また、新しく喫煙室をつくるコストもかかりますが、受動喫煙を防止するための喫煙室の設置は、国や自治体から助成金や補助金が貰えることもあるので、一度確認して見ましょう。
以上のようにさまざまな利点と欠点があります。これらを把握したうえで、自分のお店にとって最適な手段を選ぶことが大切です。
飲食店が行うべき分煙対策の方法は2つあります。1つは屋外喫煙所の設置です。屋内は全面禁煙にし、屋外に喫煙席や喫煙所を置く方法です。屋外に元々席がある店は、その席を喫煙席とするだけなので席数が減ることはありません。
2つ目は屋内喫煙室です。屋内に喫煙室を置けば、屋外や敷地外に移動する必要がないため、移動の手間を省くことができます。また、職員用の喫煙室を作ることで、タバコミュニケーションを取る場所になるので、業務効率の向上も期待できるでしょう。
健康増進法による分煙で店がどのような影響が出るのか、分煙対策はどのようにすればいいのかについてまとめました。分煙することで、売上や利益が下がると言った記事が出回っていますが、そこに科学的な根拠がないため完全に信用できる情報ではないですが、飲食店を持つ身として頭の片隅に入れておいてもいいでしょう。
分煙対策をきちんとすることでお店のイメージアップや職員の業務効率向上にもつながるので、分煙が悪いわけではありません。お店のコンセプトや客層に合わせて分煙か、完全禁煙かを決めるといいでしょう。