公開日:2022/10/15
2020年4月、改正健康増進法が全面施行されたことで、企業や商業施設、店舗などでは、完全禁煙、または分煙対策を講じなければいけなくなりました。そこでぜひ知っていただきたいのが、分煙対策によって活用できる補助金制度です。この記事では、分煙対策で活用できる補助金制度と、申請手順についてまとめました。
企業や商業施設、店舗などで分煙対策を講じると、どのような補助金制度を活用できるのでしょうか?補助金制度は大きく分けて2つです。1つ目は、国が実施している「受動喫煙防止対策助成金」。もう一つが、各自治体で独自に実施している補助金です。ここではその一部をご紹介します。
1.受動喫煙防止対策助成金
受動喫煙防止対策助成金は、国が行っている補助金制度です。
・受動喫煙防止対策助成金を受ける条件
受動喫煙防止対策助成金を受けるには条件が2つあります。1つ目が、労働者災害補償保険に加入していること。2つ目が、一般的な飲食店、事業所、工場、ホテル、交通機関などの施設を営む中小企業であることです。
・受動喫煙防止対策助成金の支給額
受動喫煙防止対策助成金の支給額は、分煙対策のための喫煙ブース設置や改修にかかった経費の1/2です。飲食店の場合は、2/3が支給されます。ただし、支給額には上限があります。まず、支給額全体の上限は100万円です。さらに面積による上限もあり、1平方mあたり60万円までとなります。
2.生衛業受動喫煙防止対策事業助成金
生衛業受動喫煙防止対策事業助成金は、国が実施している受動喫煙防止対策助成金の対象とならない、従業員を雇用していない個人事業主などを対象とした助成金です。
・生衛業受動喫煙防止対策事業助成金を受ける条件
生衛業受動喫煙防止対策事業助成金を受けるためには、2つの条件を満たす必要があります。1つ目が、労働者災害補償保険に加入していない事業者であること。2つ目が、生活衛生関係営業を営む事業主であり、既存特定飲食提供施設の事業主であることです。
生活衛生関係営業とは、飲食店のほか、旅館、理美容店、温浴施設、クリーニング業など、生活に密に関わっている事業のことを指します。さらにその中で、既存特定飲食提供施設のみが対象です。つまり、個人や家族経営の飲食店や宿泊施設が対象となります。
・生衛業受動喫煙防止対策事業助成金の支給額
生衛業受動喫煙防止対策事業助成金の支給額は、分煙対策の措置にかかった費用の2/3です。ただし100万円が上限となります。そのほかの支給額の内容は、受動喫煙防止対策助成金と同様です。
3.分煙環境整備補助金(東京都)
各自治体が実施している補助金制度の中でも、東京都が実施しているのが分煙環境整備補助金制度です。
・分煙環境整備補助金を受ける条件
分煙環境整備補助金は、東京都内にある宿泊施設及び飲食店が対象となります。その中でも、外国人来訪者に向けた多言語対応に取り組んでいるor今後取り組む意思があること、喫煙ブースなどの設置後、東京都が要請する調査・視察、事業PRに協力ができることが条件です。
さらに、宿泊施設の場合は、ロビーなどの多くの人が利用できる場所に喫煙ブースなどを設置すること。飲食店の場合、常勤の従業員が50人以下で、資本金が5,000万円以下であることが条件に加えられます。
・分煙環境整備補助金の支給額
分煙環境整備補助金の支給額は、喫煙ブース等の設置にかかった建築工事費、吸排気設備費、電気工事費のうち、4/5まで、または300万円までとなります。
ここからは、実際に補助金制度を活用するときの申請手順を見ていきましょう。ここでは、国が実施している受動喫煙防止対策助成金を例に挙げます。
受動喫煙防止対策助成金の申請手順
まずは申請前に、この制度についてよく理解をしておきましょう。制度を理解した上で、手続きを進めてください。
1.申請書類の提出
申請書類を2部ずつ準備し、所轄の労働局へ提出します。
2.交付決定通知書の受領
助成金の交付が認められると、労働局から「受動喫煙防止対策助成金交付決定通知書」が発行されます。この通知書を受領してから、喫煙ブースなどの工事に着手してください。
3.工事の発注・施工、工事費支払い
工事は、通知書に記載された内容に沿って施工します。無事に工事が完了したら、費用を支払い、領収書と明細を必ず受領しましょう。
4.事業実績報告
所轄の労働局に報告書類を2部ずつ提出します。
5.交付額確定通知書の受領、請求書の提出
助成金の交付が最終決定されたら「交付額確定通知書」を受領し、所定の様式の請求書を労働局へ提出しましょう。
6.助成金の受領
すべての手続きが完了したら、指定した口座へ助成金が振り込まれます。
7.消費税仕入控除税額の確定に伴う助成金の返還
助成金に係る仕入控除税額が確定したら、それに伴う助成金の返還を行います。助成金の手続きが完了した翌々年度の6月30日までに手続きをしましょう。
8.実施状況の報告
設置した喫煙ブース等の設備の運用状況や帳簿、書類の保存状況を、所轄の労働局に毎年報告する必要があります。
分煙対策で活用できる補助金は、申請時に多くの書類が必要になります。ここでも上記と同様に受動喫煙防止対策助成金を例に挙げて見ていきましょう。
受動喫煙防止対策助成金の申請書類
受動喫煙防止対策助成金の申請時に必要な書類は、次のとおりです。
・受動喫煙防止対策助成金交付申請書
・受動喫煙防止対策についての事業計画
・交付要件に該当する旨、及び不交付要件には該当しない旨の申し立てを行う書類
・申請日より3か月以内に撮影した、措置を講じる場所の工事前の写真
・設置を予定している喫煙室や換気装置の場所など、助成事業の詳細を確認できる資料
・講じる措置が要件を満たして設計されていることが確認できる資料
・事業場の室内とそれに準ずる環境で、措置を講じる区域以外での喫煙を禁止する旨を説明する書類
・講じる措置に関する施工業者からの見積書の写し
・事業開始の特例に係る申請書
・そのほか都道府県労働局長が必要と認める書類
分煙対策で活用できる補助金についてご紹介しました。分煙対策で活用できる補助金は、国が実施しているもののほかにも、各自治体で実施しているものがあります。
適用条件に当てはまる場合は、ぜひ補助金制度を活用しましょう。ただし、どの補助金制度も審査に時間がかかり、申請の手間もかかるため、計画的な準備が必要になることを念頭に置いてください。